元恋人に会う・2

2002年8月13日
 どうやら彼は、出来れば再び付き合いたい、と考えていたようだ。
 …ならば、何故さっさとそう言ってくれないのか。私は気を悪くした。彼によると、そんな未練がましいことは、別れた後だから言ってはいけないと思っていた、とのこと。だが、下らんメールに煩わされるよりは、はっきりと言ってもらったほうがいくらかましだ。
 
 
 しかしいずれにせよ、よりを戻す気なんぞ、私には毛頭無いのだが。会いたい時に会えないということが、私にとっては一番辛い。
 彼は忙しい人だったのだ。確かに、女にうつつを抜かす(という表現が相応しいかは疑問だが。そこまで私が彼に好かれていたかどうか…。)こと以外にもすることがある、というのはよいことだ。仕事(または、それに準ずるもの)という自分の本業に気力を傾ける、そういう彼が私は好きだった。
 けれど、その一方で、淋しさもつのっていた。初めのうちは、「毎週末のデートを惰性で繰り返し、相手に飽きてしまうよりは、各自で他の物事に取り組むほうがよい」と思っていた。だが、いつもいつもそう思えるとは限らない。私の場合、淋しさを紛らわして感情に蓋をする手段として、その理屈を利用しているところが、多分にあった。
 第一、私は今まで男の人との間に、そんな判で押したような習慣を持ったことは無かったから、飽きも、そしてその中にひそむであろう、だらけた心地好さも、知らないのだ。知る前から知り尽くした後のことを心配してしまうのは、杞憂だったか。
 
 
 それでは、彼に気兼ねなどせずに、自分から「会いたい」と言ってみればよいではないか、と反論されそうだが、それも私には出来ない。
 というのも、彼にも指摘されたが、私は自己評価が低いらしい。だから、自分に自信が持てない。
 思えば昔々からそうなのかもしれない。そして、それは数年前に、社会的な立場がまずくなってから一層ひどくなったように思う。
 だから、
「はたして、他の物事に比べて、自分の優先度(重要度)は、高くあるべきなのか?」
という疑問を覚えてしまう。
「私が他の物事にやりがいを見出していれば、こんな自分の考えには煩わされなかっただろうに…」
「あの時私さえ失敗していなければ、そもそもこんな問題にぶち当たることなく済んだのに…」
という引け目を、どうしても拭い去れない。
 
 
 そのうち、
「私は、彼にとって『都合の好い、便利な女』として確保されているのでは」
などという考えが浮かぶようになってしまった(このあたり、自尊心に乏しいわりに軽んじられるのは嫌がる私の矛盾が表れているけれど)。とは言っても、人前に出して自慢出来るような「彼女」ではなかったが。世の中の少なからぬ男の人が理想に掲げがちな、料理上手床上手な女ではないし、身なりや化粧に気合いを入れているタイプでもないから。
 けれど、私は、彼のあまり忙しくない時に呼び出せる女、という都合の好さはあったように思う。結果として、ではあるが。それに、私が側にいることによって、「恋人がいる」という認識を周囲の人たちに持たれていた、ということもある。私が彼と過ごすのは、他の人も一緒にではなく、ふたりきりのことも少なくなかったから、あまり表には出ていないが、存在は知られていたようだ。彼女持ちという立場が有利に働くか不利に働くかは、状況次第ではあるけれど。
 
 
 そんなふうに、私の中の「淋しさ」は、積み重なっていった。その上、「付き合っている」という制約ゆえに、他の人を探して気慰みにすればよい(この発想も、不謹慎というか失礼な…)という精神的な余裕も無かったから、益々気分は落ち込んでいった。
 

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