旅行中、宿泊先の食堂のテレビで報道番組を見ながら朝御飯。
 ここ数十年の、近所の国との出来事について議論がなされている。
 どうやら、番組の主張としては、当事者の方々にこの国に戻ってきてほしい、というものであるようだった。
 終盤にさしかかった頃だろうか、司会者が、総括らしきものを口にする。
 
 聞いた途端、ぎょっとした。一体何を言い出すんやこの人は、と耳を疑いそうになった。
 
 
「(あの方々に)日本に帰国して、そして、日常生活を営んでもらうということ、それが大切です。そして、ひいては納税をも、ちゃんとしていただく、と。」
 
 細部は異なるやもしれない(言葉の言い換え・剥落などが多分にありそうだ)が、大体、こんな感じの内容だった。
 特に、「納税」の部分は確実である。それこそがまさに、私が衝撃を受けた箇所だったから、忘れようもない。
 
 
 
 私自身は、国家の情勢をとやかく言えるほどの立場ではないのだろう。不勉強ということと、一人前には「国民の義務」を果たせていない、ということの、両方の意味で。
 例えば、こういう私を、「ごくつぶし」だの「国家のお荷物」だの何だのと言って罵るのなら、それはそれで仕方あるまい、とは思う。何と世智辛い、冷たいことを…と嘆く人もいるが、そういう世の中だ。
 
 
 だが、相手は20年以上、国外で特殊な環境におかれていた人なのだ。そういう人に対して、いきなり税金税金と急き立てるのは、あまりに酷だ。別の国での暮らしに移行することだけですら、大変なことに違いない。ましてや、生活の糧を得ようとすれば、尚更困難があろうかと思う。個人の単位からすれば、四半世紀の歳月は、新たな生活習慣などに馴染むには、長すぎるのだから。
 
 
 かの国の状況云々は、勝手ながらここではさておくとする。しかし、彼らを「迎え入れよう」としているこちら側としては、まずは、「自分たちのところで暮らすほうが、絶対によいに決まっている」などという考え方を信じ込まずに、ちょっと首を傾げてみてもよいのではなかろうか。少なくとも、納税を「国民の義務」として、半ば強いるようにして彼らにまで示しているうちは。
 そこまであこぎに取り立てる国が住みよいところだと、果たして自信を持って言えるのだろうか?
 
 
 某クイズ番組の「博士」役を務める4人のうちのひとりである、この司会者の彼にとっては、何気無く口にした一言、だったのかもしれないが。
 何気無いからこそ、思いがけず本心がぽろりとこぼれ出るものかもしれないな、と感じたひとこまだった。
 

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