ISBN:4840108919 文庫 大田垣 晴子 メディアファクトリー 2003/10 ¥714


レビュー

出版社/著者からの内容紹介
たとえばワタシは、ツユクサのような女。
「FRaU」大好評連載が、オールカラーで1冊の本になった!たとえば、ツユクサはしぶとい女、サザンカはファッション女、ヒマワリは宗教勧誘女など、大田垣ワールドを楽しみつつも、花のもつ強烈な個性におどろかされる、36編のイラスト&エッセイ。

花は美しいだけじゃない。目にとまらないような地味な花だってある。そんな花にも咲く意味はあるのだ。──(あとがきより)
花と女性の両方にそそがれる、あたたかく、キビシイ視線をぜひ、堪能してください。

内容(「BOOK」データベースより)
ツユクサはしぶとい女、サザンカはファッション女、ヒマワリは宗教勧誘女など、大田垣ワールドを楽しみつつも、花のもつ強烈な個性におどろかされる、36編のイラスト&エッセイ。


 
 解説より引用。
『この本は、一見すると色鮮やかな、ユーモア溢れるイラスト・エッセイだと思われがちだ。でも、じっくり読んでいくと、辛辣な女性観察が随所にちりばめられていることがわかってくる。(中略)太田垣さんが、この本で繰り返し強調しているのは、男女関係におけるオンナの駆け引きについてだ。(中略)じっくり読んでいくと、その観察の深さ、考察の切れ味に圧倒されてしまう。』

 男女間の駆け引きについての記述もさることながら、
「若さゆえの外見の勢いに頼らず、地道に努力する女は報われる」
という論調が、そこここに見られる。特に、ボケ、エニシダ、ムラサキシキブなどの項目で、その傾向が強い。著者自身、そう信じているのかな。(あるいは、執筆当時にはそう信じていた、ということか)
 ま、そうあってほしいと思いたいのは、わからないでもないけれど…(そういう気持ち、私にも多少はあるかもしれないからな。とはいえ、私が「努力」と呼べるほどのことをしているかと言えば、それは疑問だが…)。
 でも、若さやらをちゃっかりと活用して、美味しいところを掻っ攫ってゆく要領のいい女もいると思うよ〜。…なんてことは、言わないほうがいいんだろうか。

 あと、蛇足なんだけど、題名、女と書いてヒトと読ませるあたり、演歌っぽいと思うのは私だけ?

 ところで、本書には、れんげ草の項目が無い。
 れんげ草は、私にとって、特に好きな花のひとつだ。なので、ちょっと気になる。
 もしこの花を加えるならば、著者は一体、どんなふうに描くのだろう、と思った。

 * * * * * * * 

 昔々、
 「 手に取るな やはり野におけ れんげ草 」
という句を耳にしたことがある。
 れんげ草は、主に田畑の土手や休耕地に咲く花である。可愛さに惹かれて、ついつい摘んで持ち帰りたくなるが、水揚げがよくないので、残念だが萎れてしまう。私も幼い頃、それで何度か悲しい思いをした。以来、眺めるだけに改めた。
 改良(時に、改悪?)を重ねた結果、極めて人工的な環境にでも適応した…というより、もはや人の手を借りずには存在し得ない観賞用の植物とは違うのである。

 そんな性質になぞらえてだろうか。素朴な感じの、けれどある意味手強い部分もありそうな女の人(つまりは、イモねえちゃんってことか??)を気に掛ける男の人を諭す文言として、上記の句が時々利用される。
 一時の激情に絆されるなよ、もっと冷静になれ。今は、物珍しさが先走って、野暮ったいところさえも、新鮮な魅力として目に映っているだけだよ。たとえ手に入れたとて、目新しさなんか、遠からず失われる。耐久力のある観賞価値を持つのは、別の花なんじゃないか? 気紛れを起こすと、後々悔やむことになるぞ。 …なんていうふうに、ね。
 …まぁ、あわよくば蜜だけ吸ってやろうなんて魂胆もあるのでしょうかね。

 ともあれ、女の人を花になぞらえるなんてのは、昔からよくあることだ。たとえ話としては、かなり使い古されている部類だろう。
 だから、気の利いたことを言ったつもりで、自己満足に浸っているのは、はっきり言って見苦しい。この程度の陳腐な比喩で悦に入るとは…と、苦笑も漏れるというものである。
(そういうお前こそ気を付けろよ、と言い返されそうだが。)



 先日、近所のれんげ畑の辺りを久々に自転車で通りかかったところ、そこはもう水が張られ、田植えが行われていた。
 あぁそうだ、ここは元々、田圃だったんだ…。

 夏を迎える前に、れんげ草は、土に鋤き込まれて、影も形も消え失せる。
 けれど、自身の姿は無くしても、土壌の一部となって、農作物を育てる。
 目を見張るような即効性は得られないかもしれない。けれど、緩やかで穏やかであるがゆえに、確実に養分を行き渡らせる。劇的な効果も無い代わりに、危険や不自然さを伴うことも無い。

 それが緑肥の底力。

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